【ジャーマンレイルパス】(仕事場D・A・N通信vol.40)
コロナで海外旅行は大きく制限された。一般の観光旅行なんて、不要不急の最たるものだから、いつになったら再開できることやら。加えて年齢のことは無視できなくて、わざわざ不便するに決まっている場所に出かけていく気力が、なだらかに下降線だ。決定的なのは、相棒が亡くなってしまったことだ。こう重なると、思い出話でもするほかあるまい。黙っているとどんどん忘却の河に流されていく実感もなくはない。そんなわけでここに妻との旅の記憶を勝手に書いている。
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この時は南ドイツをウロウロしようと、ジャーマンレイルパスを持っていた。だから特急に座席を指定せず乗ることが可能だった。これは随分自由度が増した。その結果、間違っても、乗り過ごしても、気が変わっても平気だった。
一番の恩恵は、同じところに又行ってみようと思えることだった。ライン川沿いのこの辺り、ローレライで有名なところだが、右岸、左岸ともにレールが敷設されている。更にトンネルが多いがICEも走っている。
フランクフルトから、マインツ、コブレンツ、ボン、ケルン、リューデスハイム、ウィスバーデンを、インターシティ(IC)や各駅停車で二周巡った。停車中に気が向いて降りた小さな街もあった。シーズンイン直前の静かな街の空いたレストランで食べたランチは記憶に残る。
写真のハイデルベルクには、フランクフルト滞在中の一日旅行で出かけた。3月下旬だったので、朝はまだ肌寒い。そんな駅のホームに二人で立って列車を待っていた。すると、構内アナウンスが聞き取れなかったのであろう事を察したドイツ人男性がわざわざ、「この特急は20分余り遅れて到着する」と英語で教えてくれた。さらにホームをウロウロしているカフェワゴンは、列車遅延のサービスで無料だから、珈琲でも飲んで暖まるよう教えてくれた。それまでにも感じていたことだったが、ドイツ人の中年男性はとても親切だった。
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