みる・よむ

 アメリカの雑誌「スポーツ・イラストレイティッド」掲載の一枚の写真に触発されてこのマンガを描いた。リングの頭上からボクシングを撮影したものだ。M.アリの試合だったと思う。まだ日本ではスポーツ雑誌「ナンバー」が創刊(1980年)される前のことだ。昭和のスポーツ中継は今みたいにいろんな角度から、多数のカメラで押さえることなど想像できなかった。

 雑誌「ナショナル ジオグラフィック」は、今発行されている日本語版が登場する以前から、英語版の写真だけ眺めて、凄いなぁとつぶやいていた。

 バブル期には雑誌の広告収入が半端ではなく、相次ぐ創刊のファッション雑誌など、一冊も売れなくても既に採算は取れている状況だったと聞いた。あの頃、とくに雑誌文化が隆盛だったことを思い出させてくれる。

 そう考えると、ここ30年ほどの間に、本当に大きな変化があったことが分かる。今や出版は大変な状況で、漫画誌までも頭打ちのようだ。もっとも、マンガ読者は電子版への移行が多いらしく、あれこれ雑多に連載されたものを楽しむのではなく、読みたい作品だけを一気に通読するのが今流だ。

 書籍の発行部数減少や書店の相次ぐ閉店を見ると、活字離れは確かに著しい。しかしそう述べる人の多くが腹の中に、活字尊重、ビジュアル軽視の発想をはらんでいる気がしてならない。読書家の優越意識は昔から引き継がれている事のように思うが、若い世代は受け継いだりしていないだろう。

 私は二十代半ばになって初めて本を読むようになった人間なので、「漫画しか読まない!」等という言い方で誰かを軽視することはない。(描いているしね!)

 うがった見方かもしれないが、十代によく勉強したとか、たくさん読書したと語る人が、一番片寄って価値を見いだしているように思う。それって学歴偏重の発想と同根だろう。とはいえ、読書は良い選択だなぁとつくづく思う。歳をとっても引退しなくていい趣味だ。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

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