【USB】(仕事場D・A・N通信vol.32)

 あってはならないことが起きた。PCのデータ保存にUSBメモリーを使っていたのだが、その一本が読めなくなった。タカをくくってバックアップを取っていなかった。当然のことながらうろたえた。

 今回のデータ喪失は、全国各地で実施してきたワークショップの過去のパワポレジュメ、そしてasoblockのワークショップに紐付けて分類収納していた、コラム関連の全てである。

 断片的にPCのあちこちや、保存媒体の過去のものに残されている可能性はある。しかし最近のものは厳しい。まったく災難である。

 だが、このような事態は初めてかというとそうではない。一度は今回と全く同じ事が起きた。もう一度はUSBの紛失だった。二度とも完全復旧は難しく、対応に膨大な時間とエネルギーを割くことになった。

 だから再発に対応できるよう、複数のバックアップを取る習慣を定めた。外付けハードディスクも購入したし、買い換えたノートPCの前に使っていたものをデータ保存用にしていた。しかし、こまめなバックアップは面倒なのである。めったに起きないことへの対策である。全データ喪失のような目には、長いPC使用人生においてあっていなかった。これが油断を生んだのだろう。

 この話、十年通っている東北の津波被災関連で聞く話と同じである。分かっていることなのだ。どのように準備すべきかも知っていることなのだ。しかし、それが個人の日常ではなかなか実行できない。

 そういえば政府や大企業の管理者も、「想定外の事態……」などとよく口にする。その時は、「何を言っているのだ!」と私も思うのだ。なのに我がことでは、こんな事態を招いてしまう。当然、未だかつてないことでも、想定外でもない。

 つまりこれが平凡な人間の日常に潜むリスクであり、一般人の対応なのだろう。分かっているのにやってしまう人間の行動選択を考えると、心がけの話ではないことが分かる。

 植木等は昔、「分かっちゃいるけど、止められない」と歌った。そういう人間への対策が技術革新の世界でたくさん取り組まれている。私が反省的に思い浮かべる、几帳面さとか律儀さなんて、前世代モードなのだ。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

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