【マ】マイ フェア レディ(私的埋蔵文化財)

 70ミリ・ミュージカル大作。オードリー・ヘップバーン&レックス・ハリスン主演。ブロードウェイでロングラン・ヒットミュージカルの映画化である。公開時、ヘップバーン人気と重なって、華やかな話題になり、映画は大ヒットした。

 大スクリーンで堪能した私は、すぐレコード店に足を運び「サウンドトラック盤」を購入した。「サントラ盤」を購入するのがおしゃれな時代だった。擦り切れるほどということもないが、繰り返し聞き込んで、英語の歌が映画一本全曲歌えるようになったりした。それくらい一本の映画を大切に扱っていた時代だ。

 映画音楽というと思い出すのは、人生で初めて購入したLPレコード。アーサー・フィードラー指揮・ボストンポップス管弦楽団の西部劇テーマ集。

 赤穂(兵庫県)に住んでいた叔父の家に遊びに行って、カッパブックスの松本清張シリーズ全巻がそろっているのと、LPレコードのコレクションに驚いた結果の行動だった。普通の家にこんなものがあるのか!と思ったのだ。我が家にはどちらも存在しなかった。そこで聴いた一枚だった。

 そんなわけで家にはまだステレオなどない時に、レコード盤より小さなプレーヤーで聴くために購入したのだから、今考えるとちょっと不思議。内臓スピーカーなんて小さい、小さい。

 このパンフレットにも時代が反映されているが、ご覧の通り見開きが歌と写真で構成されている。そして登場する全22曲中、なんと11曲の歌詞と翻訳が掲載されているのだ。

 例によってオードリーの歌声の大半は吹き替えだし、彼女の映画としての代表作でも名作でもないが、華やかな社交界にのし上がってゆく街の花売り娘だった女性。いかにもなミュージカル噺だ。

 制作された1964年(昭和39年)といえば、高度経済成長を遂げるまっただ中の日本社会。華やかに希望が右肩上がりに展開していく気分を社会全体が抱えていた時期だ。欧米へのあこがれも強く、まだまだ経済発展途上の日本人には、無条件に「社交界」なんて存在をあこがれに受け止める土壌があったのだろう。

 当時あんなに入れ込んだ映画だったにもかかわらず、その後一度も再見したことはない。観たいと思ったことのない一本でもある。「ローマの休日」なんて、何度も観ているのに。

士郎さん.com

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