【ロ】ロッキー(私的埋蔵文化財)

 「ロッキー」は公開時、大きな話題だった。前評判よりも、公開後、見た人たちの口コミがすごかった気がする。1977年の映画だから、私が30歳の時、結婚して子どもも一人いて、なのに週末はふらふらと京都、大阪に出かけていた。そんなタイミングのどこかで、たぶん大阪駅前にあった梅田グランド劇場で観た気がする。大きな劇場ではなく、評判の映画では必ず混雑著しい映画館だった。指定も入れ替えもない、大混雑が盛り上がっている証拠のような時代の映画鑑賞。

 内容がどうこう言うのではないシルベスター・スタローンの低予算見世物映画の傑作だと、観る前から思っていて、実際その通りのプロレスのような映画だった。なじみの定番旋律「ロッキーのテーマ」は、今に至っても多くの人の耳に定着してしまっている。意識的には知らない人も必ず覚えがある曲なんて、そうあるものではない。

 作曲はビル・コンティなのか、とネットで調べて思った。詳しく知っているわけではないが、覚えのある作曲家だ。映画音楽って数人の極端に有名な人が、あれもこれもやっている感じがある世界だ。

 ジェリー・ゴールド・スミス、ジョン・ウイリアムス、エンニオ・モリコーネ等、私の時代の映画愛好者には、サウンドトラック盤(LPレコード)と共に、記憶に残らないわけがない名前だ。

 ビル・コンティを調べてみるとやっぱり、「ハリーとトント」、「グリニッチ・ビレッジの青春」、「結婚しない女」、「グロリア」、「プライベート・べンジャミン」、「007ユア・アイズ・オンリー」、「ライト・スタッフ」、「ベスト・キッド」、「ブロードキャスト・ニュース」と、あの時期に観た映画、軒並みだった。

 それと比べると、監督のジョン・B・アビルドセンはこの作品でアカデミー監督賞を受けているのだが、他にたいした作品がない。同じくシリーズ化された「ベスト・キッド」くらいらしい。

 たしかに映画監督というのもハリウッドでは大変な仕事で、巨額の製作費に対して、見合う興行収益がないと、即クビになってしまう。名匠、巨匠と言われた人だって、一本の大コケ作で仕事がなくなったりする。ジョン・フランケンハイマーやマイケル・チミノ、黒澤明だって映画が作れなくて苦労した時期がある。

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