【最後の晩餐、おあずけ】(仕事場D・A・N通信vol.7)

 「また来ればいい」、というのは簡単だが、よほど強い関心がなければ、再訪することは叶わない。ましてそれがミラノとなるとなおさらだ。そもそもミラノに立ち寄る事になったのは、北イタリアから日本(関西空港)への帰路航空券が直前になっても取れず、中部空港(セントレア)着のミラノ発便なら可能だと言われたからだった。イタリア北部への旅、出発は関西空港―ベネチア便だった。

 水の都ベネチア、芸術の街フィレンツェ、それと比較すると、ファッションの都ミラノにはそれほど関心がなかった。 追加のように一日観光したミラノだったし、レオナルド・ダ・ヴィンチへの興味も世間並だ。ガイドブック片手の駆け足だったが、せっかくだからと訪れた「最後の晩餐」があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。

 ガイドブック「地球の歩き方」に書いてあるように、やはり予約入場を理由に断られた。「ワザワザ日本からはるばる来てるんだよ!」とイタリア語で言ったところで駄目だったと思うが、言えるはずもなく。考えてみれば、観光客はたいていはるばる来た人達だ。

 仕方がないので、近くのジェラート屋でピスタチオ味とかなんとかをなめながら妻と二人、下校のお迎えで校門前にたむろするイタリアン・ママ達の雑談を眺めてジ・エンド。

 十年後、友人がコモ(北イタリア・コモ湖畔)のギャラリーでマンガの展覧会をした。それに同行してミラノ&コモ湖を訪れることになった。そのオプショナルツアーで「最後の晩餐」の教会に入場した。ミラノ再訪など考えたこともなかったのに、見落としたダビンチを十年後に見ることになった。で、「なるほど、これか……」といった印象でおひらきに。

***

 数年前、鳴門市の大塚国際美術館で、この教会内部を復元した部屋に、修復前の「最後の晩餐」と、修復後の色鮮やかな「最後の晩餐」が向かい合わせ展示(むろんレプリカ)されているのを見た。その方が面白かった等というと、身もふたもないが、そうなんだから仕方がない。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

0コメント

  • 1000 / 1000