【緑波/正太郎】(仕事場D・A・N通信vol.14)

 「ロッパ日記代わり手当たり次第」は古い本ではない。しかし古川緑波は1903年生まれで、1961年に亡くなった喜劇役者だ。私が子どもの頃、ラジオでよく名前や声を聞いていた。文章家でもあるので、本もたくさん出ている。そんな中の一冊を気まぐれに手にして、少し読んで長いこと放置してあった。

 週末に二冊のノンフィクションが読み終わり、ちょっと気分転換に選んだ。前に読み終えたあたりからスタートして、風呂で読んでいたら、舞台や映画について、なかなか辛辣で楽しい評論をしている。登場作品は私が小学校時代、団体鑑賞で出かけたものや、文部省特選とか謳われていたものも多く馴染みがある。それらをあまり褒めていないのが面白い。古い映画のDVDが安価で手に入るようになったから、そんな中から何か再見してみようかなんて気持ちが動いた。

 こういうおじさんっていつの時代にも居るなぁと思っていたら、そうだ池波正太郎だ!と思い当たった。こちらは1923年生まれで、1990年に亡くなった「鬼平犯科帳」や「真田太平記」の著者だ。緒形拳も所属していた新国劇の脚本を書いたりもしていた。 

 信州上田市に池波正太郎真田太平記館があり、覗いたことがある。

 池波にも映画や食べ物についてのうんちくをつらつら綴った「銀座日記」なるものがあり、どういうわけか気に入って文庫本を読んで、数年後にまたKindleで読んだ。晩年にフランス旅行が好きになり、定期的にお供をつれて、彼の地の田舎をドライヴして、美味いものを食べて紀行文を書いたりしていた。絵もたしなむ人で、自分の連載の挿画や本の表紙イラストを描いたりもしている。そういうところに、ちょっと憧れているかもしれない。

 でも肝心の時代小説は読んだことがなかったので、いい機会かとシリーズ物「剣客商売」の第一巻を手にした。ロングセラーである。見事にはまった。ただいま第五巻を読書中。

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