【飛んでイスタンブール】(仕事場D・A・N通信vol.15)
イスタンブールに一週間、居続けることにした。トルコ国内の観光地に遠出したりせず、市内で二度ホテルを引っ越した。
最初のホテルだけは出発前に二泊、頼んであった。空港バスから路面電車への乗換駅近くの、アメリカ人団体ツアーが多く利用しているホテルだった。一晩経って、値段も手頃だったし、良くも悪くもないが、このままでもいいかと思って更に連泊を打診してみたら、いっぱいだと断られた。
そこで市内のホテル探しに出かけた。「地球の歩き方」に掲載されているところも二、三見たが、アヤソフィアの側のこじんまりしたホテルを、部屋を見せてもらって決めた。宮殿のライトアップショウの時刻、一帯が停電する宿だった。屋上からの黄昏がきれいだった。プチホテルの手作り朝食も好ましかった。
その頃、旅の最低限の準備として,ホテルは事前に確保して出かけていた。だから現地で部屋を見てから宿泊を決めるのが楽しかった。これまでは、「ああきれいなホテルだなぁ、泊まってみたい」と思っても,その選択はなかった。
楽しくなってきたのだ。ならば次は、元監獄の独房をリノベーションしたとガイドブックに書いてある、ボスポラス海峡を望む高台の超高級ホテル、フォーシーズンズしかないじゃないか。
街ブラのついでに直接フロントに行って週末の空部屋を尋ねた。すると即OKというので、5泊目、6泊目はここに決めた。部屋にウエルカムフルーツが用意され、廊下でスタッフとすれ違うと、こちらの名前を口にして挨拶してくれるようなホテルは初めてだった。
イスタンブール市内のあちこちをガイドブック片手に一週間、歩き回ったのは面白かった。中でも、塩野七生著「コンスタンチノープル(イスタンブールの旧名)の興亡」をカフェでゆっくり読み切ったのは贅沢だった。町の歴史書をそこにいて読みふける楽しさは格別だった。
20年も前のことだ。
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