【残念でもなく】(仕事場D・A・N通信vol.27)

 コロナ禍で予定が中止、延期になる。一年前から計画されていたものや、二十年近くも継続してきたものが、中断に追いやられる。でも生きていれば、こんな事もあると思ってとっとと諦める。予定がなくなることで、新たに生まれることもあると考えようとする。

 そう思えるのは、リタイア世代だからだというのは分かっている。でも、こんな巡り合わせの時代、誰もがそこから始めるしかないじゃないかと思っている。

 何が不自由かというと、遠出できる機会がめっきり減ったことだ。外出好き、旅好きなもので、仕事に遊びに、とにかくよく出かけてきた。毎週末といってもオーバーじゃないくらい、全国各地で家族理解ワークショップを開催してきた。

 国内移動は圧倒的に仕事が多いので、遊びに行くのは海外になる。五十歳からフリーになって、時間調整を自分で出来るようになったので、少しまとまった休みを取っては海外に出かけた。

 どちらかと言えばヨーロッパ方面がお気に入りで、アメリカにはあまり魅力を感じない。ヨーロッパは大小を問わず、随分たくさんの国や街を訪れた。有名な観光地もいいが、名も知らなかった都市や、観光客は訪れない街がとても魅力的だったりする。

 そんな街がBSの旅番組などに登場すると嬉しくなる。先日見たのは、ライン川・マイン川・ドナウ川の「リバー・クルーズ船の旅」。アムステルダムから黒海までの船旅だった。見ているうちに、船が立ち寄る川沿いの街の半分以上を、列車やバス、徒歩で妻と訪れたことがあるのに気付いた。

 二人でTVを見ながら思い出話に花を咲かせ、お互いの記憶違いに、ああだ、こうだと他愛ない言い合いをする。そんな老後のはずだったのだが、残念ながらそこは見込み違いになった。

 でも、「行けるときに行っておこう!」と早くから旅を重ねてきたから、こんな残念が残せた。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

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