【漫画家】(仕事場D・A・N通信vol.26)
子どもの頃から、落書きは好きだったが、意識して漫画を描くようになったのは高校時代からだ。春日丘高校「マンガ研究同好会」なるものを創部して活動していた。その続きで大学でも、マンガ研究会に参加した。
高校の漫研を一緒にスタートさせたYとは、大学でも一緒に漫研に所属した。卒業を迎えて、それぞれ職業選択の時期になるのだが、漫画を描くことはやめなかった。気まぐれに新聞投稿などをして、掲載されると嬉しくて報告し合ったりしていた。
そんな中で、新聞の投稿漫画欄の縁で、マンガグループ「ぼむ」を発足させることになった。SとMを加えた四人がメンバーになった。同人誌「ぼむ」を発行しながらメンバーが増えてゆき、年一回のギャラリーでの「ぼむ」マンガ展も五十年を超えた。あれ以来ずっと、今も漫画を描き続けている。
しかし自分の中では、一度も漫画家になろうと思ったことがない。それほど絵が上手ではないので、おこがましい感じがあって、下手の横好きで続けてきた意識が勝っている。だからといって、もし絵が上手だったら漫画家を目指していたかというとそうでもない。そもそも漫画家になりたいとも、なれるとも思っていなかった。
一昨年、Yは病気で亡くなった。「ぼむ」をスタートさせてしばらくして、彼は余り漫画を描かなくなっていたから、交流も少なくなっていた。Sが良いライバル漫画家として先行していたので、それが励みになって続けられたところは大きい。漫画制作のためのアトリエを構えるなんて、想像もできないことをSが実現させたのをみて、自分もアトリエが欲しいと思った。それが結果的に今の「仕事場D・A・N」に繋がっていった。
五十歳で一冊のマンガ本出版も成せてなかった自分が今、大小合わせて二十冊を超す。こんな事になるとは思ってもみなかったが、何の具合か途絶えることのない漫画仕事にも恵まれて今に至った。何かを続けようとする時、良い仲間との遭遇は不可欠だ。自分はそれにも恵まれてきたなぁと思う。
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