【ルンバは偉い】(仕事場D・A・N通信vol.45)

 変な感覚なのか、誰もがそうなのかは分からない。しかし以前、一週間レンタルのお掃除ロボットが届いたときにも同じことがあった。

 「ルンバ」、買おうかなと何度も思った。でも普段、掃除なんかしない。ホコリで死ぬことはないという主義の夫婦だったので、そんな家に暮らしていた。

 たまに孫達がやってきて泊まったりしたら、ホコリアレルギーで目がかゆくて大変だと訴えられた。なのにさほど対策は講じなかった。亡妻も私も「掃除」に価値を見いだしていなかった。

 そんな連合軍が妻の死で崩れた。放置しているとどんどん汚れていくのを、何であれ見過ごしにくくなった。考えれば当然のことだが、妻はそれなりにやっていたのだ。

 そして思いついたのがルンバのことだった。「本当に勝手にやってくれるのか?」「段取りが面倒で、すぐ使わなくなったりしないか?」。疑心から一週間レンタルのサービスを利用してみた。

 使い始めると、その変な感覚はさっそく起きた。「ルンバ」が動いている時、自分がゴロゴロしているのは悪い気がする。そんなことを思う必要はないのだろうが感じるのだ。

 結果的に「ルンバ」が掃除している間、私は洗濯をしたり、ものを片付けたりしていた。一週間のレンタルが終わって返却した。それから約半年、廊下や床はうっすらホコリ状態だった。気は付いていたが、誰に何か言われるわけじゃなし・・・と思っていた

 そんな時、ジャパネットたかたのTVショッピングでルンバのセールをやった。これが見逃せなかった。安いかどうか分からないが、良いきっかけだと思った。

 そして届いた日曜の午後、レンタルしたことがあるので使い方は承知している。充電するとすぐ働き始めてくれた。久しぶりだなぁと音を耳にしながら、自分が活性化しているのを感じる。先ずはルンバが動きやすいよう、先回りして床のものを片付ける。次に洗濯機を回して、乾燥機に置いたままの食器を棚に片付けた。どこかで音がするのが、自分の中の行動を促している。「ルンバが働いているんだから、あんたも働いたら」と言われているみたいだ。

 そして夕刻、これを書いている。これは家事労働ではないのだけれど。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

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