【さ】サウンド オブ ミュージック(私的埋蔵文化財)

 まず、この映画パンフレット、定価150円。1965年(57年前)公開の大作。ザルツブルグの草原を、テーマ曲を高らかに歌い上げながら主人公が歩くのを上空から撮った映像。18歳の私はまだ近眼の自覚なく、70ミリ映画の大スクリーンを観ていた。「ピントの甘い映像だなぁ」と思った記憶があるが、その後しばらくして眼鏡を誂えることになる。

 監督のロバート・ワイズはこの前に「ウエストサイド物語」を撮ったのを見ていた。オープニングの俯瞰映像は、NY下町にぐんぐん迫るあちらのほうに軍配が上がる気がした。だからアルプスの大草原の主人公に迫っていく映像も、「またこのアングルかよ!」なんて、生意気なことを思っていた。

 映画「サウンド オブ ミュージック」は世間的にはとても評判の良いものだった。ファミリー・ミュージカルというのか、「ドレミの歌」、「エーデルワイス」なども、みんなが歌っていて誰もが好きだと語られているようだった。日本ではペギー葉山という女性歌手が「ドレミの歌」を大ヒットさせていた。この人は「南国土佐を後にして」や「学生時代」を歌っていた歌手だが、私好みではなかった。

 それも多少影響しているかもしれないが、私にはどうもいまいち魅力に欠けた映画に思えてならなかった。その理由の一つが主演のジュリー・アンドリュースが好みではないことだった。女優(役者)としての評価は高い人だが、セクシーではないのだ。

「メリー・ポピンズ」との連想もあってか、なんか家庭教師のおばさんなのだ。勝手なことを言うなと叱られそうだが、映像の世界にしばし酔いたいと思って足を運んだスクリーンに、いつも正しいことを言っていそうな人が現れても魅了されることはなかった。

 とは言いながら、パンフレットに劇中歌11曲が紹介されているのを見てみると、半分ぐらいが英語で口ずさめてしまう。サウンドトラック盤なんてレコードも大流行していた頃で、それなりに楽しんではいた。オードリー・ヘップバーン主演の「マイ フェア レディ」なんて、何度も聞き込んだサウンドトラック盤レコードの結果、多分今でも全曲英語でうろ覚えながらも歌えたりする。もっとも、オードリーは素敵だが、歌は吹き替えで彼女は歌っていないのだが。

 いずれにしても、サウンド オブ ミュージックを再見してみようと思うことは一度もなかったのは多分、主演女優ゆえだった。

士郎さん.com

家族心理臨床家で漫画家でもある団士郎さんに関する情報をまとめたオフィシャルページ。本ページは、本人の了承を得てアソブロック株式会社が運営しています。

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