【フ-4】ブリキの太鼓(私的埋蔵文化財)

 「ふ」分類が止まらない。しかし、誰と約束したわけでもないので、書きたいと思えば書けばよい。「ブリキの太鼓」、タイトルとパンフレットのイメージ写真が忘れられない一本。カンヌグランプリとアカデミー賞も受賞している輝かしい作品だ。

 しかし、映画の中身はさっぱり覚えていない。昭和56年(1981年)公開だから、私は34歳でこれを観ていることになる。独仏合作の原作ギュンター・グラス、フォルカー・シュレンドルフ監督はスラスラ言えるのだから、当時の頭の中に敬意をもって私にとっての新規情報としてインプットされたのだろう。

 ドイツ映画には東西冷戦構造下のベルリン、そしてナチスの時代の影が、どの作品にも漂う。ハリウッドをはじめ、映画業界はナチスネタでどれくらい売り上げを伸ばしたのだろう。

 断片的なヨーロッパの知識でも、現在のウクライナとロシアの関係の底に、歴史的軋轢の時間が見える。今のドイツになる前の西ドイツ、東ドイツ時代のドイツ。その前、ワイマール共和国の時代もあった記憶があるのでスマホで調べたら、第一次大戦後のわずか14年の寿命だった国だとか。

 13,4年の国といえば、よく知らない他国のことより「満州国」をすぐ思い出す。日本人の個人記憶の中に、様々なものを残した満州国が、15年にも満たないで消えた国だなんて、ある時期まで恥ずかしながら考えたことがなかった。そして自分の生きている国がなくなるとは、どんなことだろうと思った。

 「世界の消えた国」という本があって、国は永遠に不滅だみたいな日本人感覚は、まったく世界標準ではないことを知った。それにしても第二次世界大戦以降にも、たくさんの国が消えていることを知ると、難民という言葉が実感的に迫ってきそうだが、なかなかそんな感覚にはなれない。

 2019年、表面上は平和だったウクライナを旅した時、首都キエフ(現キーウ)で多くの教会や博物館、チェルノブイリ博物館を訪問した。まさか三年後の今、こんなことになっているなんて。

 そして最近知ったことだが、ウクライナ・ナショナル・ミュージアムという小さな施設がシカゴ(米国)に存在するらしい。今、ロシアの侵攻に様々なものが破壊されているのをみると、国の歴史博物館をアメリカにも持っている意味を、民族の知恵と戦略として考えさせられた。

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